豊かな人間性を育てる 充実した教育体制
東京歯科大学学長 井出 吉信
1890年創立。日本最古の歯科医学教育機関である東京歯科大学は、歴史と伝統だけでなく、全国でもトップレベルの国家試験合格率を誇る歯学界の雄。私大では合格率17年間連続1位を獲得し、毎年コンスタントに100人以上の合格者を出す傑出した存在だ。なぜそれほどまでに優秀な成績を上げることが可能なのか。井出吉信学長に聞いた。
「わかるまで教える」 教員の質の高さが自慢
東京都千代田区。古くから文教地区として多くの大学や研究機関、文化施設が立ち並ぶこの地域にキャンパスを構える東京歯科大学は、日本で最古の歯科医学教育機関だ。2010年に創立120周年を迎え、2012年から順次開校してきた新校舎は、教育、研究、そして臨床の分野で最新の設備を備えるだけでなく、同大ならではの教育方針に沿って設計されている。
例年90%以上と全国でもトップクラスの国試合格率を誇り、毎年コンスタントに100人を超える合格者を輩出する大学は、全国でもほとんどない。なぜ、これほどまでに高い合格水準を保っているのか。その理由は、同大学の教育方針に特長がある。
その1つ目がきめ細かな学生へのサポート体制だ。まず学年主任・副主任を置き、学習面だけでなく生活面や精神面でも、学生一人ひとりをサポートする体制を整えている。加えて学生課、教務課、歯科医学教育開発センターでも個々の学生のデータや成績、学習の進捗度といった情報を蓄積し、それらを教員と共有して学生へのサポートに役立てている。
それだけではない。東京歯科大学の教員数は943人(非常勤含む、2017年4月現在)と、学生数861人よりも多い。マンツーマン体制による指導は同大の伝統ともいえるが、単に教員の人数が多いだけではなく、教員の質の高さにも定評がある。そのため教員の教育力の向上にも相当の力を注いでいる。
学生が教員を評価する制度は他大学でも見られるが、東京歯科大学では、時に教員同士が互いの授業を聴講しあい、指導法などのチェックを欠かさない。さらには学長自らが教室に足を運んでチェックし、教員を指導することもあるという。「学生が授業を理解できないのは、教え方に問題がある」という基本方針に従い、わかるまで教える姿勢を徹底しているのだ。
独自の教材開発にも熱心に取り組んでいる。動画や3Dプリンターなどの機器を駆使し、学生の理解度を高める教材を開発。レントゲン写真から3Dデータを起こし、そのデータを3Dプリンターで出力して患部の模型を作るなど、最新技術を惜しみなく投入している。
単なる知識の詰め込みではなく、学生に「気づき」を促し、理解を深めるにはどうすればよいかを常に模索し、教材への工夫を続けているのだ。
充実した自主学習環境が学習意欲を高める
東京歯科大学では、構内のレイアウトにも独自の工夫がある。構内にはラウンジや図書館など、様々な場所に学生が自主学習を行えるスペースが設けられ、休み時間や放課後などに学生が集まってくる。また時には自主学習する学生に教員が声をかけ、質問を受けたり、レポートの指導を行ったりといった姿が見られる。
井出学長によれば、普段から学生と教員が交流し互いの距離が近ければ、学生一人ひとりの学習意欲も高まる効果があるという。
もう一つ、学生同士がグループで教え合うシステムも同大の特長だ。クラスをいくつかのグループに分け、仲間同士で協力して学習する。人に教えることは、自らの理解を深めることにもなるし、互いに励まし合い学ぶことで学生が孤立することも防げると井出学長は言う。
このグループ学習は学力の向上だけではなく、学生同士の信頼関係の構築や仲間意識の醸成にも寄与する。また、相手の理解度を把握したり、話を聞く力、伝える力といったコミュニケーションスキルの育成にもつながっている。
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