医系大への羅針盤 医歯薬進学

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Close Up《未来の医療人をつくる場》

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  • 2017.11.13
  • 第2回 日本歯科大学
  • 徹底した現場主義で意欲的な人材を育成

    日本歯科大学生命歯学部長 羽村 章 教授(高齢者歯科学)

     

    自分で考え、挑戦する学生を万全の体制でバックアップ

    1907(明治40)年に創立し、2016 年に110 周年を迎えた日本歯科大学。
    在学中の学生は約2000人*と、歯科医師養成機関としては世界最大の規模を誇る。
    これまでの卒業生は通算で2 万人を超え、現在10 万人を超える日本の全歯科医師の約1割が同大の卒業生だ。そんな歴史と伝統にとらわれず、果敢にチャレンジを続ける同大が重視するのは、徹底した現場主義。歯科医療に新たな領域を見出し、「生命歯学部」を牽引する羽村章歯学部長に聞いた。

    * 学校法人日本歯科大学としての総数

     

    歯を通じて人の健康に貢献する

    私立共立歯科医学校として1907年に千代田区大手町に創立。2年後の1909年に現在の飯田橋に移転し、以来100年以上にわたって多くの歯科医師を育ててきた日本歯科大学。私学優勢といわれる日本の歯学教育機関の中でも屈指の名門校の一つだ。

     

    そんな歴史と伝統を誇る同大が、学部名を歯学部から「生命歯学部」に変えたのは2006年のこと。日本だけでなく、おそらく世界でも唯一、歯学部に「生命」という言葉を加えた理由。それは同大が目指す歯学の新たな方向性を示すためだった。

     

    歯だけを診るのではなく、口の中の健康を通じて人間の健康を診る。これが、同大が目指すこれからの歯科医師の役割だ。歯の治療だけではなく、生命体である人を診るということを学生や教職員に意識づけするための名称変更だった。

     

    創立以来、同大のモットーは自主独立だ。与えられたものを学ぶだけでなく、自ら考え、行動に移す姿勢が重視される。

     

    その代表例は生命歯学部内に2015年に設立された「歯の細胞バンク」だ。歯の幹細胞が骨髄幹細胞と同等の多分化機能を持つだけでなく増殖能力が高いことに着目した同大は、抜去歯から簡単に、しかも安全に歯の幹細胞を取り出して保管する細胞バンクを立ち上げた。これは歯の幹細胞を預けた患者が将来、ケガや病気などで再生医療に用いる細胞が必要になったときに保管している細胞を届けるという事業で、歯髄幹細胞は神経細胞への分化が容易なことから、神経性疾患の脊髄損傷や神経損傷、脳出血や脳梗塞の後遺症などのバイオ再生医療への応用が期待されている。

     

    日本の大学としては初の歯の細胞バンク事業であるが、歯髄幹細胞という歯科大学ならではの着目点に加え、医師との連携による再生医療への取り組みは、従来の歯学の分野に留まらず、新たな領域に踏み出す同大の自主独立の精神が生み出した好例と言えるだろう。

     

    医療現場での学びが意欲的な学生を育てる

    もう一つ、日本歯科大学の特徴は徹底的な現場教育にある。

     

    同大の学生には、自分で考え、目標を決めて実行することが求められる。与えられた課題をどのように解決するかを考え、行動に移さなければならないのだ。問題基盤型学習、またはPBL(Problem based learning)チュートリアル教育と呼ばれる教育方法だが、ここで培った力が医療現場での実習で活かされる。

     

    同大では5年生になると大学附属病院で患者を担当し、実際に患者の診察や治療を行う。このとき、学生は自分が学生であること、治療を担当すること、そして自分が行った治療を評価してほしい旨を自分で患者に伝えなければならない。患者とどのようにコミュニケーションをとり、評価をお願いするか、そのプロセスそのものが学生にとって大切な経験であり、歯科医師としての自覚が芽生えるのだという。

     

    もちろんこれは患者と大学病院、そして担当医師の間にゆるぎない信頼関係が構築できているからこそのカリキュラムであり、実習に向けては入念な準備と大学側のバックアップ体制が敷かれている。

     

    例えば、模型で学んでいた学生がスムーズに人間の患者の治療に移行できるように、痛みや言葉に反応する人型ロボットシミュレーター「シムロイド」を産学共同で開発した。このシステムは治療風景を2方向から録画・録音が可能で、治療技術だけでなく自分がどのように患者と接したかを学生にフィードバックできるようになっている。

     

    また、東京医科歯科大学などと共同でeラーニングのコンテンツを開発し、時間に縛られずに学生が学べるような環境の整備も行っている。


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