医系大への羅針盤 医歯薬進学

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  • 2018.11.22
  • 「創薬」の奇跡をつくる
    ー認知症根本治療薬に身命を賭す
  • 異色ずくめの研究者が語る新薬開発の舞台裏

    同志社大学生命医科学部 客員教授
    杉本 八郎(薬学博士)

     

    都内の工業高校から製薬会社に入社、夜学に通いながら新薬の実験…と、異色の経歴を持つ杉本八郎先生。母親の認知症発病をきっかけに、世界初のアルツハイマー治療薬「アリセプト」の開発に成功しました。現在はバイオベンチャーを立ち上げ、アルツハイマー病根治薬の研究に精力的に取り組んでいます。成功率が極めて低く、忍耐を強いられる創薬研究の意義と極意について伺いました。

     

    高卒でエーザイ入社スタートは研究補助員

    ー先生は工業高校卒業後、エーザイ株式会社に入社されました。工業高校への進学は、ご家庭の事情と伺っています。

    はい。私は9人兄弟の8番目で、家計はいつも火の車でした。母から「工業高校に進学すれば、卒業後にすぐに仕事に就けるから」 と勧められて、工業高校に進学したのです。どちらかと言えば文系の科目が得意な、詩人か小説家を夢見る青年でしたから、理系の高校では成績もよくなかったんですよ。

     

    ー就職先に製薬会社を選んだ理由をお聞かせください。

    実は、エーザイが製薬会社というのは入社してから知りました(笑)。今のようにインターネットで何でもわかる時代ではありませんからね。求人欄に「エーザイ」とカタカナの名前があって、ソニーなんかと同じような会社かなと思って調べてみたところ、当時は従業員が千名にも満たない小さな会社でした。小さな会社なら、私のような人間でも何か貢献できるかもしれないと思い、入社試験を受けたのです。

     

    ー入社後は、どのような仕事をしていらっしゃったのでしょう。

    高校で化学を学んでいたので、有機合成の 研究室への配属を希望しました。でも、高卒で研究なんかできるわけがありません。実際の仕事は実験道具を準備したり、器具を洗っ たりといった研究補助。先輩に一から教えてもらいながら覚えました。
    正規の研究員になるには大卒以上の資格が必要だったので、働きながら学べる大学の夜 間部へ進もうと決意しました。当初は授業料の安い都立大(現・首都大学東京)を目指したのですが不合格が続いて、4年目に職場の近くにあった中央大学に入学しました。幸い、先輩方も応援してくれたので、無事に仕事と学業を両立させることができました。それでもなかなか研究職にしてもらえなくて上司とケンカしたり、出世できない腹いせに組合活動に熱中したりね。若いころはいろいろとやりました。
    高校で剣道をやっていたので、エーザイでも剣道部を作って…私は初代部長なんです。実は定年までずっと私が部長だったんですが(笑)。製薬各社の剣道部が参加する薬業剣道連盟も立ち上げました。エーザイが優勝したこともあるんですよ。その時はお祝いに、部員に稽古着一式を贈りました。

     

    世界を驚かせたアルツハイマー病治療薬

    ーエーザイの研究員として二つの薬を開発されました。一つ目は血圧の薬「デタントール」ですね。

    血管の中にα1という受容体があるのですが、これが刺激を受けて収縮すると血圧が上がるんですね。このα1をブロックすると血管が開いて血圧が下がります。この薬を使うと血圧だけでなく眼圧も下がるので、緑内障の治療にも使われています。
    デタントールは、エーザイが初めて海外に *導出した薬で、会社に大きな利益をもたらしました。そしてこの成功が、私みたいに大学院を出ていない人間でも研究開発に携われるんだ、という自信を持たせてくれたのです。


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