医系大への羅針盤 医歯薬進学

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  • 2018.02.13
  • 「病は口から」を実感。地域密着型クリニックを開業、小児科・内科を併設する歯科医
  • 開業のきっかけは出産だった

    麗華クリニック 院長 歌橋 麗華(医学博士)

     

    歯学部出身の麻酔科医という経歴。麻酔の研究で医学博士を取得した歌橋麗華先生が、一転してクリニックの開業に至った理由は、出産でした。仕事と育児の両立-多くの女性が悩む問題を、持ち前の機転で正面突破。そんな歌橋先生が院長を務める「麗華クリニック」は開業から19年目を迎えます。多くの患者さんから信頼を集める、歌橋先生のブレない姿勢についてお話を伺いました。

     

    歯学部を選んだのは自身のコンプレックスから

    ーはじめから歯科医を志していたのですか。

     いいえ、高校生の時は弁護士になりたいと思っていました。映画かなにかの影響だったと思うのですが、感情で動くのではなく、論理的に物事を考え、法律に基づいて判断する弁護士に興味を持ちました。推理小説を読むのも大好きでしたから、弁護士という仕事をスリリングに感じていたのです。
     
     ところが残念ながら私には文系の才能がなくて…。あまりにも文系の科目の成績が悪く、通っていた予備校の先生に「弁護士は無理だよ」と引導を渡されてしまいました。
     
     文章を書くのが苦手なのです。本を読むのは好きなのですが。音楽や美術もあまり得意ではありませんでした。反対に数学は得意で、物理の証明問題なども大好き。それで理系のクラスに入りました。

     

    ー受験で歯学部を選んだ理由は何ですか。

     自分の歯にコンプレックスがあったからです。私は子どもの頃、体が弱く、治療のために飲んだ薬の副作用で歯が変色してしまったのです。歯牙着色というのですが、6歳前後の歯が生え変わる時期にその薬を飲むと、副作用で歯が黄色や茶色になってしまうのです。昭和40年代の研究で薬の副作用だとわかったのですが、当時はまだ知られていませんでした。
     
     自分の歯をきれいにしたいという思いがあって歯学部を選んだわけですが、入試の面接で「自分の歯を歯科医になって治したい」と言ったとき、教授陣全員が笑ったことを覚えています。美容師は、自分の髪は切れないでしょう? 歯科医も自分の歯を治療することはできないんですよね。でも、そんなことすら思い至らない学生でした。実際に臨床に入ったとき、面接担当だった教授に「ほら、わかっただろう。自分で自分の歯は治せないよ」と言われました(笑)。

     

    出産をきっかけにクリニックの開業を決意

    ークリニックの開業は最初からプランにあったのですか?

      まったくありませんでした。実は私の専門は麻酔科です。歯学部を卒業後、歯科の領域だとどうしても頭頸部だけなので、全身管理を学びに医学部の麻酔科に研修に行き、そのまま麻酔医として勤務しながら、麻酔の研究を続けていました。医師か歯科医師の国家資格を持っていれば麻酔医になれるのです。学位も私は医学部でとっているので医学博士です。
     
     私が大学を卒業した頃、インフォームドコンセントという言葉が流行りだして、患者さんにいろいろと治療の方針を説明しなければならなくなりました。私は人とコミュニケーションをとるのが苦手なほうで、患者さんと上手に接する自信がなくて…。その点、麻酔医ならそれほど患者さんとおしゃべりする必要はありませんから。

     

    ーそんな先生が開業するきっかけは何だったのでしょう。

     出産です。大学病院の麻酔科の研究医として働いているとき、妊娠8か月、32週の極小未熟児で子どもが産まれました。自分の体は2週間で回復して退院できたのですが、子どもはNICU*にいて明日死ぬかもわからない状況でした。
     
     当時私は、週に5日の勤務と当直がありました。子どもがNICU にいるからといって自分だけ休むわけにはいきません。そんな日々を送っていたとき、たまたま現在のクリニックの前の道を通りかかり、建物の出窓が目に入りました。「あ、いいな。きれいだな。ここで開業しようかな」と思いついたのです。その日のうちに決めました。出産してからまだひと月も経っていませんでした。
     
     教授から言われた、「女性の人生でそう何度もない(出産という)幸せのときに、そう無理せずに子どものことに専念してはどうか。席は空けておくから後で戻ればいいじゃないか」という言葉も後押しとなり、大学を辞めました。自分のことで迷惑をかけるのも耐えられませんでしたし。
     思い返すと大変な毎日でしたが、大学病院で必死に学んだ経験のおかげで今があります。

     

    ー開業で、お子さんと過ごす時間は増えましたか。

     勤務医だとなかなか時間が自由になりませんが、自分で開業すれば、自分のペースで働け、仕事と育児を両立できると思ったのです。何より子どもの命を助け、母親として見守りたいと思いました。
     
     住居とクリニックを隔てるのは扉一枚。開業当初の患者さんは、みんなうちの子どもをあやしてくれました。その脇で、私は仕事をしていました。最初は人を雇うお金もなかったので、治療だけでなく、予約電話の応対や受付、保険請求といった医療事務、院内の掃除などすべての仕事を、育児をしながらひとりでやっていました。おかげさまで、子どもの授業参観や保護者会、PTA にも参加できましたし、今はスタッフが協力してくれるので、とても感謝しています。

     


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