医系大への羅針盤 医歯薬進学

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  • tokusyu02
  • 2019.05.27
  • 医科歯科融合の鍵は「尊重と協調」。両方の医師が専門性を発揮して、患者を幸せに!
  • ダブルライセンス医師が語る

    筑波大学医学医療系顎口腔外科学 教授
    同大附属病院 歯科口腔外科長
    武川 寛樹(医学博士)

     

    1年前、本誌3月号で『医科と歯科の融合を目指して』と題して掲載したインタビュー記事はかつてない反響を呼びました。その代表的な意見が「歯医者は医者ではない」というもの。しかし歯周病が全身疾患に及ぼす影響や、歯随細胞による再生医療などを考えると、医師と歯科医師の連携は是非とも必要なことではないでしょうか。そこで本誌編集部は再び筑波大学を訪ね、ダブルライセンスをお持ちの武川寛樹教授に、医科歯科ともにどこへ向かうことが患者にとって幸せなのかを語っていただきました。

     

    医学と歯学の違いはある。
    その問題の根っこは深い

    ―前回の記事に対する反響で目立ったのは

    私の父も歯科医で、実家は歯科医院でした が、私自身は政治家の秘書とか、通訳になり たいと思っていました(笑)。いつもスーツ を着ていてカッコいいじゃないですか。それ で、英語をたくさん学べる道をと、留学試験 を受けたのですが、落ちてしまったんです。 自信をなくして落ち込んでいたときに、父の 医院にいた技工士さんがある日、「やってみ る?」と話しかけてくれて、総義歯(入れ 歯)を何歯か並べさせてくれたんです。「患 者さんにセットするときにまた見においで」 と言って…。当時の私は、歯科医の娘であり ながら、歯医者は怖いところというイメージ があり、「入れ歯をセットするなんて痛そう だなぁ」と気のりしなかったんですが、立ち 会ってみました。すると、父も技工士さん も、歯が全部なくなった患者さんも、みんな 楽しそうに話をしながら歯がセットされてい くのです。びっくりしました。父と技工士さ んが連携し、患者さんがリラックスした状態 で入れ歯を受け入れている姿を見て、そのとき、「歯科医も面白そうだな」と思いました。

     

    ー歯科医師の道へ舵を切ったのですね。そこからは順調でしたか。

    「歯科医師は医師ではない」という、おそらく医師と思われる方々からのご意見です。ダブルライセンスの武川先生は、どうお考えでしょうか。
    確かに医師と歯科医師は、違うことは違い ます。歯科医師は口腔という場所に限定した 医師とも言えますが、免許が違いますから、 やはり同じではありません。
    基本的なこととして、まず治療方針が異な ります。口腔内というのは食道、胃腸、肛門 とひと続きの体外です。ですから、歯は、体 外に露出している唯一の硬組織なのですね。
    虫歯になると溶けてしまって自然治癒しません。
    医師は、例えば術後の肺がX線で白くなっ た時に、肺炎や肺水腫などと診断して治療方法を決めたら、あとは治療して経過を診ていきます。患者さん自身が体を治すのであって、医師は手助けをしていき、治癒に対して謙虚です。
    一方、歯科医師は、歯の悪い所を削って、 型を取って金属にして、削った所に入れて、 「かみ合わせは、これで正しいです」と決めます。良くも悪くも、歯科医師が決めてしまうのが歯科医療の特徴と言えます。

     

    ―先生は歯学部と医学部を卒業して口腔外科医になったので、歯科と医科の違いをご存じです。前回、両者が離れつつあることを懸念されていましたが、今もそうでしょうか?

    ええ、歯科と医科は分かれきっています。ですから、ダブルライセンスの私が口腔外科で働いていると、時には「最近は、医師免許 は使わないのですか」と聞かれてしまう(笑)。 私は、口腔外科を行うために必要だと感じて 医学と歯学の両方を学んだわけですから、どちらが専門というような話ではないのです。歯科と医科は違うと言いましたが、お互いの違いを認識しつつ、連携することが大切だと思います。皆さん「口腔がん」と聞けば、 口腔外科を連想される方も多いと思います。 医学部の口腔外科と、歯学部の口腔外科があ りますが、日本の場合、口腔外科医は、ほと んどが歯科医師です。かつて口腔外科は医師 が始めて、次いでダブルが継承してきましたが、現在は、日本口腔外科学会の1万人の会員のうち、口腔外科を専攻している現役のダブルは私を含め6人だけです。つまり現状は、消化器外科などのトレーニングを受けられない歯科医師が口腔外科で執刀しているのです。
    すでに実害も出ていますから、私は医師あ るいはダブルライセンス医師との連携なしに歯学部単科でがんの治療を行うことには問題があると考えています。歯科医師だけの施設で手術を受けた患者さんが出血で亡くなったことがあったでしょう。歯科医師の免許で可 能な医療行為の範囲をきちんと定め、医師と連携して医療にあたることが当たり前であれば、こういう不幸は防げたかもしれません。患者さんが安全で質の高い医療を受けるため に、一番良いのはどういう体制かを第一に考えれば、このままでいいとは、とても思えません。

     


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