医系大への羅針盤 医歯薬進学

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  • 2017.07.01
  • 小児科医から公衆衛生学者へ。今、養護教諭を育成する教育者として立つ
  • 「いのち」を見つめる仕事に終わりはない

    静岡大学教育学部教授 鈴江 毅

     

    幼い命と向き合う小児科病棟での治療経験から、人間の精神や心そのものに関心を持つようになり、子どもの自殺予防など熱心に取り組んできた鈴江教授。探究心は留まるところを知らず、現在は臨床も続けながら養護教諭を育成する教育者として教壇に立っています。他方、趣味も多彩で、ある時はマラソン走者、ある時はサックス奏者と、貴重なプライベートタイムを惜しまず躍動、密度の濃い時間を過ごしています。彩り豊かなキャリアを歩んできた鈴江教授に、その人生哲学を伺いました。

     

    病児の命を見つめて

    ー 徳島大学医学部を卒業後、まず小児科に入られたのですね?

    内科系の中でも診療対象が成長していく小児科に興味を持ち、当時、非常に治療が困難だった小児白血病の治療や研究にあたる小児科血液・腫瘍グループに入りました。なるべく「生き死に」の近くにいたいと考えたからです。

    研修後、四国内のいくつかの病院に勤めました。ドクターカーで向かった産院で緊急帝王切開に立ち合い、重症の新生児蘇生を行ったり、山奥の乳児健診で異常児を発見・搬送したり、瀬戸内海の離島に渡ったり、ありとあらゆる経験を積みました。7年ぶりに戻った大学病院で取り組んだのは、海外から導入したばかりの「末梢血幹細胞移植術」の小児白血病患者への安全かつ効果的な実施です。指導医が、「小児でも病名告知は全員にすべき」という当時としては大変進歩的な考えをもつ人であり、積極的かつ活気に溢れた日々をおくることができました。

     

    死に近づく病児を前にスタッフ一同、悲しみを深めることもありましたが、子どもたちはむしろ前向きでした。大人でも音を上げるような化学療法の最中でも、週1回の院内学級を待ちわびて、教師の登場に目を輝かせるのです。明日にも、いや今晩にも命を終えるかもしれないけれど、学びたいし、学ぶ意味
    はある。懸命な彼らの姿に「学びの本質」を見る思いがしましたね。

    一方で、長い人生を願いながら短い人生を生き終わる子どもたちを診るうち、私は命について考え込むようになり、身体よりも魂の生き死にこそが重要なのでは、という思いを抑えきれなくなりました。それで、脳科学、精神医学、臨床心理学に取り組むことにしたのです。

     

    研究面では、香川医科大学(2003年に香川大学に統合)医学心理学教室で、非常に自由な視点を持つ精神科医の教授のもと、精神分析や家族療法、描画療法、そして骨董趣味に至るまで、ご指導いただきました。非常勤講師として授業や実験を行っていたのですが、その活動がきっかけで、同大学で衛生・公衆衛生学教室の助手となったのが、大学教員生活の始まりです。ここでは我が国トップクラスの公衆衛生学教授に指導いただき、公衆衛生学の研究や医学生・看護学生の教育、メンタルヘルス・産業医としての臨床も行いました。学生たちとの距離が近い職場は、とてもやりがいがありました。


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