医系大への羅針盤 医歯薬進学

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  • 北里大学特別栄誉教授大村智
  • 2017.03.23
  • 栄えあるノーベル生理学・医学賞を受賞! いま、それに続く人材を育てる
  • 定時制高校の教員からキャリアをスタート。
    人間味あふれる医療人の育成に心血を注ぐ。

    北里大学特別栄誉教授 大村 智

     

    愛犬の健康のため、フィラリア症の予防や治療の薬を使ったことがある人は多いはずです。動物の消化管にひそむ線虫の駆除に抜群の効果を発揮する抗生物質を発見したのは、北里大学の大村智・特別栄誉教授。この薬は、やがて人間の感染症撲滅にも貢献し、世界中で多くの命を救った功績から、大村先生にノーベル賞をもたらしました。今回の特集では、大村先生の学生時代や進路選択、キャリア形成を振り返り、大きな成功を支えた人生のキーワードを探ります。

     

    定時制高校の教員から出発

    アフリカなどで年間数千万人に感染して多くの人を失明させてきたオンコセルカ症(河川盲目症)や、熱帯地方を中心に各地で象皮病やリンパ浮腫を招いてきたリンパ系フィラリア症。いずれもブヨや蚊などを介して人に寄生する線虫が引き起こす病気で、多大な社会的損失を招いてきました。北里大学特別栄誉教授の大村智先生は、これらの病気や、ダニが原因の疥癬(かいせん)という皮膚病などの特効薬「イベルメクチン(商品名:メクチザン)」の元となる化学物質「エバーメクチン」を発見した功績によって、2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。抗生物質の発見による受賞では、1945年のペニシリン、1952年のストレプトマイシンに次ぐ史上3つ目です。
     
    2004年に訪問したガーナでは、無償供与され多くの人を救った薬「メクチザン」の発見者と紹介された途端に人々から歓声が上がりました。それほど感謝される仕事をしたということです。もう病に侵されなくていい輝く瞳の子どもたちに囲まれて満面の笑みをたたえた大村先生の写真は、ノーベル賞受賞を機に、繰り返しメディアでも紹介されました。
     
    実学を唱えて輝かしい研究業績を挙げた北里研究所創立者の北里柴三郎博士さえ得られなかったノーベル賞を、ついに手にした大村先生。受賞の最大の決め手となったエバーメクチン発見は1979年、その後も貴重な抗生物質を次々と発表しました。そのキャリアの出発点は意外にも定時制高校の教員。ここでの経験こそが大村先生の向学心に火を付け、研究を生涯継続する原動力となったのです。地元の大学を卒業後、東京都立墨田工業高等学校に就職して、化学、物理、生物、体育を教えていた大村先生。仕事で疲れた体で登校し、夜学にいそしむ生徒たちの真剣な姿に、あまり勉強しなかったかつての自分を恥じ、頑張る彼らに鼓舞されるように学び直しを決意します。まずは、東京教育大学(現・筑波大学)の研修生に。その後、東京理科大学大学院に通い、寝る間も惜しんで勉強します。そして就職5年目で修士論文を仕上げると同時に高校の職を退きました。ちょうどその春に結婚し、母校でもある山梨大学の工学部発酵生産学科の助手に就職。ブランデーの醸造研究から、研究職の道を歩み始めます。
     
    生涯の研究テーマとなる「微生物」に出会ったのも、この頃でした。とはいえ、農家で育った大村先生にとって、もともと微生物は身近な存在。その姿は見えなくても、働きは知っていました。堆肥の山が微生物による発酵で自然に熱を発する不思議さを、かなり幼いころから全身で体験していたからです。
     

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