医系大への羅針盤 医歯薬進学

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  • 01
  • 2018.12.25
  • 睡眠に関する医学的知見を世の中に広めたい
  • 2人に1人が睡眠障害と言われる日本で治療と研究に気を吐く、若き伝道師

    東京医科大学精神医学分野兼任助教
    睡眠健康研究ユニットリーダー
    菅野病院精神科・睡眠外来
    睡眠総合ケアクリニック代々木
    志村 哲祥(精神科医・医学博士)

     

    睡眠不足に快眠枕、無呼吸症候群…睡眠に対する私たちの関心は高く、実際に悩んでいる人も少なくありません。それだけに最新の研究に照らすと不正確な「常識」が出回り、情報に躍らされているむきも。睡眠の臨床と研究に携わる志村哲祥先生は、思春期の子どもたちの睡眠時間の少なさやリズムの問題など、心身の健康のためには放置できない状況があると力説します。今この時も、臨床や研究・講演活動を通して正しい情報の普及に努め、診療の現場を牽引している志村先生に、お話を伺いました。

     

    半月も続く不眠は治療が必要

    ー睡眠の悩みは放置してはいけないのでしょうか?

    私たちは眠っている間に脳や体をメンテナンスしています。それが滞ると心身の不調をきたします。ですから、寝ようとしても眠れない、途中で何度も起きてしまう、眠っても疲れが全くとれない、といった症状が2週間以上続く場合は、早めに医師に相談したほうがいいでしょう。「たまになかなか眠れない日がある」くらいであれば大丈夫ですが、続くのは問題です。

     

    ー受診せずに市販の睡眠薬を飲んでやり過ごす人も多いのでは?

    睡眠薬の使用は対処療法でしかありません。しかも市販薬は意外と副作用が強く、そもそも「不眠症の人は使うな」という記載があります。「なぜ眠れないのか」という原因を突き止めることが大切です。意外かもしれませんが、「睡眠障害を治療する専門外来(以下、睡眠外来)」の治療では、睡眠薬をあまり使いません。ただ、睡眠外来は、全国にもそれほど多くなく、どこも予約待ちという状況です。ここ(埼玉県和光市)にも静岡や福島から通ってこられる患者さんがいます。

     

    ー睡眠時無呼吸症候群の専門外来はわりと見かけますが。

    無呼吸の外来の場合、主に診るのは耳鼻咽喉科、循環器科、呼吸器内科の先生であることが多く、無呼吸以外の睡眠の問題についてはあまりケアしてもらえないことが多いのです。睡眠のことで悩んで内科にかかる人も多いと思いますが、検査設備がないと診断できない睡眠障害もあり、医師向けのガイドラインでも、初期的な治療で治らない場合は睡眠専門の医療機関に送ることが推奨されています。私も共著で以前に『プライマリ・ケア医のための睡眠障害―スクリーニングと治療・連携』(南山堂、2012年)という本を出しました。

     

    ー潜在的な睡眠障害の患者数はかなり多いのですか?

    はい。日本人は世界的に見ても睡眠時間が短いこともあり、2人に1人は睡眠に問題があると言われています。不眠も多く、約5人に1人に不眠症状があり、そして成人の14人に1人は睡眠薬を飲んでいるという調査結果があります。セルフケアを普及していく必要もあるし、かかりつけ医の先生にも理解を深めて頂く必要があると思います。

     

    ーあまり今は理解されていないのでしょうか?

    知識のある先生もいる一方で、患者さんに平然と「寝なくても死にはしない」と言い放ってしまう先生もいます。特に覚醒時間が日照時間・社会的スケジュールと大きくずれる「睡眠リズム障害」などは、ほとんど知られていません。医学部のカリキュラムに睡眠の講義はほとんどないのですよね。私も、学部生の頃から学会に出たり、井上雄一先生(東京医科大学睡眠学講座教授、睡眠総合ケアクリニック代々木理事長)の研究室にお邪魔したりして、独学で勉強していました。

     

    自身の経験から睡眠専門医に

    ーそもそも先生はなぜ医師を目指されたのですか?

    幼少期にひどい喘息持ちで何度も死にかけて、助けられてきたことが最初の理由です。医師になった理由で、7~8%が「自分が助けられたから」と答えたというアンケートを見たことがありますが、私もそれですね。4歳ぐらいの時には医師になろうと思っていました。両親とも医師ではなく、男女4人いる兄弟姉妹のうち、医療系の仕事に就いたのは、よく病院のお世話になった自分だけです。今でも忘れないのは、小学校で卒業文集に全員が描いた「将来の自分」の絵です。華々しく活躍している医師を描いた同級生は何人もいたけれど、私は書類の山に埋もれている医師の絵を描いたんですよね。当時から、かなりリアルな姿を想定していたわけです(笑)。

     


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