医系大への羅針盤 医歯薬進学

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  • 2017.12.14
  • 顕微鏡の向こうに 患者さんの人生を背負う責任を胸に、 病理をつきとめ診断する
  • 文系の大学→社会人→医学部へと舵を切ったドクター

    北里大学医学部准教授 北里大学北里研究所病院 病理診断科部長 所長 原 敦子(医師)

     

    国際基督教大学社会科学科を卒業後、JICA(国際協力事業団)で国際貢献の場に身を置いた経験をもつ原敦子さん。その後、一念発起して医学部への受験を決意。 見事、北里大学医学部に合格し、今、病理診断の現場で活躍されています。顕微鏡をいくら見ても見飽きることがないという原先生にこれまで辿ってこられた道のりをお聞きしました。

     

    国際貢献への夢を抱いた学生時代

    ー28歳で医学の道を志すまで、JICA で働いていらっしゃったとか。国際貢献への思いが強くおありだったのでしょうか。

     まず、私にはふたりの恩師との出会いがあります。ひとりは、高校時代の英語の先生。この先生が素晴らしい方で、将来、英語を使う仕事をしたいという、憧れと希望を抱かせてくれました。もうひとりはICU(国際基督教大学)に通っていた時、国際関係学で講義をされていた馬場伸也先生です。世界はまだ米ソという二強が支配している時代でしたが、馬場先生は講義の中で「これからの国際関係は、上(強国)からの目線ではなく、下(一人一人のアイデンティティ)からの目線で動いていく」とおっしゃった。まさにぶっ飛ぶような斬新な世界の見方を教えていただき、感動ものでした。それ以来、この「下から目線」は、私にとって政治に限らず全ての社会を見る際の立脚点となっています。
     その言葉がきっかけで、社会科の教職課程をとっていたものの、外務省等で外交関係の仕事ができたらいいなと思うようになりました。子どもの頃から引っ込み思案な性格だったのに、何か燃えるものが宿ったというか。
     ところが、当時の外務省の採用は、圧倒的に東大卒が多く100人中9割以上が男性でした。試験に受かっても面接が通らず、2回落ちて、男性優位の社会という現実を突きつけられました。その頃、たまたま知人からJICA の嘱託の話を聞いて応募し、中途採用されたのです。
     採用後、発展途上国へ専門家を派遣する業務に関わりましたが、実際に求められたのは、いかにお茶を美味しくいれるかとか、アフリカ奥地に赴任している職員に醤油を送るようなことで…私が思い描いていた国際貢献とはだいぶ違っていました。これでは将来が見えないと思い、すごく悩みました。そうして、現地で働くためには事務方ではなく、技術者や、特に人員が不足している医療系など、手に職のある人たちが求められていると知ったんです。それで、よし、じゃあ医学部受験だ!と決意しました。28歳のときでした。
     

    ー思い切った決断ですね。

     ええ。でも、いつだったか朝日新聞の『折々のことば』で、「道ひとすじに打ち込む姿は美しいかもしれないが、道が2本、3本あって、『あれも、これも』という生き方もいいではないか」*という言葉が紹介されていて、ものすごく共感しました。自分がしたいことをいろいろやって、迷いつつもアイデンティティを見つけていくのは、とてもよいことだと思うんです。

    *『小さな出版社の作り方』(永江朗著)より

     

    予備校で高校生と肩を並べて勉強

    ーICU では文系でいらしたわけですから、受験勉強は大変だったと思うのですが。

     ええ。まず親を説得することから始まりまして、よく許してくれたと感謝しています。父からは「本当にやりたいなら最後まで全うしなさい」、母からは「もうだめだと思ったら、お見合いしなさい」と(笑)。でも、父が歯科医だったこともあり、医療の世界に親和性があったことは幸いでした。
     理系の勉強については、確かにものすごく大変でした。仕事が終わると、御茶ノ水の駿台予備校の夜間部に通って、高校生たちと肩を並べて勉強。数学が苦手だったので、徹底してやっていたら、ある日突然、アッと解けるコツみたいなものがつかめたんです。天才的な学者が扱うような理論や問題は別として、受験生レベルの数学はある程度の回数を必死でこなせば、私のようになんとかなると思います。それに入学後に感じたのは、医学部は理系というイメージがありますが、実は文系の側面もあるということです。

     

    ーそれはどういうことですか?

     北里大学医学部に入学して1年目は教養科目で数学や物理を学ぶのですが、2年目以降は、体の組織や病理、解剖、診断学、治療学を学ぶ。これはもうひたすら暗記する世界、つまり文系なんです。
     それから、医者は技術をもって患者さんを治療しますが、人間を相手にする仕事です。文系の高校生の皆さんにも恐れず医学部を目指してほしい。北里大には仕事も家庭も軽やかにこなす素敵な女医さんがたくさんいます。文系だからと進学するのを心配している生徒さんには「大丈夫、勝つのはきみだ!」と、言ってあげたいですね(笑)。

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